排尿障害治療薬及び頻尿治療薬

排尿障害治療薬及び頻尿治療薬

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排尿障害(前立腺肥大症)

排尿障害とは、何かしらの原因で尿路が狭くなり、なかなか尿が出なくなってしまう状態です。

 

尿路が狭くなる原因としては、大きく2つが考えられます。
①α1受容体機能が亢進することで、前立腺・尿道の平滑筋が緊張を増し、尿道が狭くなる。
②前立腺が肥大し、肥大した前立腺が尿道を圧迫して、尿道が狭くなる。

 

このようなことが原因で、尿が出にくくなったり、残尿感を感じるようになります。
前立腺肥大症は、年齢が高くなるにつれて発症しやすくなります。60歳代で約6%、70歳代では約12%の人が前立腺肥大症に悩んでいます。

 

ここでもう一度、前立腺肥大症の症状を確認しておきましょう。
はじめは、尿道が狭くなる(下部尿路閉塞)により排尿障害や残尿感が主な症状として現れます。その状態が続くことによって、膀胱の機能に変化が起こってきます。その結果、しだいに蓄尿障害(頻尿・夜間頻尿、尿意切迫感など)が主な症状として現れてきます。
前立腺肥大
尿道が狭くなる(下部尿路閉塞)ことを改善するために、薬を使用します。
主な治療薬としては、以下の薬があります。
①選択的α1受容体遮断薬
②5α-還元酵素阻害薬
③抗アンドロゲン薬

 

下部尿路閉塞を改善するための薬物治療①

まず、交感神経の刺激によって平滑筋が収縮している様子を見てみましょう。
前立腺肥大α1
交感神経からノルアドレナリンが放出され、前立腺のα1受容体に結合します。α1受容体の機能が亢進すると、前立腺内の平滑筋が収縮し、尿道の閉塞が起こります。このように、尿道が狭くなるため、尿が出にくくなってしまいます。

 

この状態を改善するためには、どのようにすればよいでしょうか?

 

単純に考えて、α1受容体遮断薬を使用すればいいと思いますよね。それでは、使用してみましょう。
①α1受容体遮断薬(タムスロシン、シドロシン、ナフトピジル、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル)
前立腺肥大α1改善
交感神経から放出されたノルアドレナリンが、前立腺のα1受容体へ結合するのを阻害することで、平滑筋を弛緩させることができます。その結果、尿道を広げることでき、排尿障害を改善できます。このことによって、尿をスムーズに出せるようになります。

 

以上から、α1受容体遮断薬を使用することによって、下部尿路閉塞を改善することがわかったと思います。

 

α1受容体のサブタイプについて

これは、追加情報になります。もう少し深くα1受容体について見てみましょう。

 

α1受容体には、α1A、α1B、α1Dのサブタイプがあります。そのサブタイプの違いによって、効果や副作用の発現頻度が異なってきます。α1Bは主に血管平滑筋に、α1Aとα1Dは主に泌尿器の平滑筋に発現しています。このような違いから、どのα1受容体のサブタイプへ結合するかによって、
薬の効果に違いが出てきます。α1Bに結合する場合は、高血圧治療に用いられ、α1A・α1Dに結合する場合は、排尿障害治療に用いられます。

 

つまり、今回の排尿障害を改善したい場合には、α1A・α1Dに選択性が高い薬が適しているとわかります。もし、α1Bにも結合してしまった場合は、血圧低下の作用が起こり、起立性低血圧などの副作用を起こすことになります。

 

下部尿路閉塞を改善するための薬物治療②

次に、男性ホルモンの作用で前立腺が肥大している場合を見ていきましょう。
前立腺肥大男性ホルモン
精巣からテストステロン(TST)が放出され、前立腺細胞内に取り込まれると、5α-還元酵素と呼ばれる酵素によって、ジヒドロテストステロン(DHT)に変換されます。ジヒドロテストステロン(DHT)は前立腺のアンドロゲン受容体に結合して、前立腺細胞の増殖を促進します。これによって、尿道が狭くなり、尿が出にくくなってしまいます。

 

この状態を改善するためには、どのようにすればよいでしょうか?
一つは、テストステロン(TST)をジヒドロテストステロン(DHT)に変換する5α-還元酵素を阻害すればいいとわかります。
二つ目は、ジヒドロテストステロン(DHT)がアンドロゲン受容体に結合して、前立腺細胞が増殖するのを抑えればよいのです。

 

②5α-還元酵素阻害薬(デュタステリド)
③抗アンドロゲン薬(クロルマジノン、アリルエストレノール)
前立腺肥大男性ホルモン改善

 

前立腺に作用する男性ホルモンの作用を抑制することで、前立腺の肥大化を防ぐことができます。こ
れによって、尿がスムーズに出るようになります。

 

以上が、前立腺肥大症に用いられる薬とその作用機序です。

 

過活動・低活動膀胱

今までは、尿道が狭くなることで尿が出にくくなる場合を見てきました。それ以外にも、排尿・蓄尿がうまくできず困ってしまうことがあります。それを、次に見ていきましょう。

 

まずはじめに、膀胱がどのように動いているのか知っておくことで理解しやすくなると思います。(参考までに見てください)

 

下部尿路機能とそのコントロール

尿を溜める機能と尿を出す機能を下部尿路機能といいます。

 

下部尿路機能は、主に大脳皮質橋の排尿中枢(PMC)、仙髄排尿中枢(仙髄オヌフ核)によってコントロールされています(排尿調節系)。
橋の排尿中枢(PMC)は排尿と蓄尿を切り替えるスイッチとしての役割を担っており、大脳によってコントロールされています。仙髄排尿中枢は、蓄尿・排尿反射中枢であり、PMCによってコントロールされています。

 

排尿調節コントロールの関係
大脳 → 橋の排尿中枢(PMC) → 仙髄排尿中枢(仙髄オヌフ核)

 

①尿が溜まって膀胱が刺激されると、排尿調節系に刺激が伝わり、大脳に尿意を伝えます。

 

まずは、蓄尿の関係を見ていきます。
②大脳は尿意が出るまで、排尿反射が起こらないようにPMCを抑制します。(排尿スイッチOFF
③この時、交感神経の興奮により、排尿筋は弛緩、内尿道括約筋は収縮します。(出口が閉まるイメージ)
④仙髄排尿中枢による陰部神経の興奮により、外尿道括約筋が収縮します。(出口が閉まるイメージ)
⑤副交感神経は抑制されており、膀胱(排尿筋)の収縮は起こりません。
これらに作用によって、尿は溜まっていきます。

 

次に、排尿の関係を見ていきます。
⑤大脳が尿意を感じると、PMCの抑制が解除されます。(排尿スイッチON
⑥PMCによって交感神経が抑制されて内尿道括約筋が弛緩します。(出口が開くイメージ)
⑦PMCによって陰部神経の抑制されて外尿道括約筋が弛緩します。(出口が開くイメージ)
⑧副交感神経の興奮により膀胱(排尿筋)が収縮します。
これらの作用によって、尿を出すことができます。

 

以上の関係によって尿が溜まったり、出たりしているのです。

 

排尿調節の自律神経支配の関係

排尿調節

 

自律神経

 

 

排尿筋

 

 

膀胱括約筋

 

 

排尿

 

β2受容体

β3受容体

M3受容体

α1受容体

M3受容体

交感神経興奮

弛緩 

 

収縮 

 

抑制 

副交感神経興奮

 

収縮 

 

弛緩 

促進 

排尿は、上の図のような関係でコントロールされています。まずはこれを理解して覚えましょう。

 

では、図と表を見ながら確認していきます。

 

交感神経が興奮すると、排尿は抑制です。副交感神経が興奮すると排尿は促進です。
これは、走っているときになど興奮状態では尿が出ない。安静にリラックスすると尿が出るというイメージを持つとわかりやすいと思います。

 

次に、交感神経が興奮すると、排尿筋ではβ2とβ3が刺激されて弛緩し、膀胱括約筋ではα1が刺激されて収縮します。
これは、スポイトをイメージしましょう。スポイトの丸い部分を押すと水は勢いよく出ます。逆に押さなければ、水は出ません。つまり、スポイトの丸い部分にあたる排尿筋が弛緩していれば、尿が出ないということです。また、スポイトの先の部分である膀胱括約筋が収縮し、出口が閉まっていれば尿は出ません。

 

最後に、副交感神経が興奮すると、排尿筋ではM3受容体が刺激されて収縮し、膀胱括約筋ではM3受容体刺激されて弛緩します。これは、先ほどの交感神経が興奮する場合と逆ですね。つまり、スポイトの丸い部分が収縮し、出口も開いているということです。
(ここで、共にM3受容体が刺激されるのに、なぜ排尿筋と膀胱括約筋で収縮と弛緩という違いが出るのかについて、いろいろと調べてみたのですがわかりませんでした。すみませんが、わかる方がいらっしゃれば教えてください。)

 

参考)
外尿道括約筋は、横紋筋性の括約筋であるため、自身の意志によって排尿の開始、停止を調節することができます。また、β2受容体の刺激によって筋は収縮します。

過活動膀胱(頻尿)

それでは、過活動膀胱について見ていきます。

 

過活動膀胱の症状としては、我慢できないような強い尿意を感じます(尿意切迫感)。この尿意切迫感は診断においても必須であり、時には切迫性尿失禁を起こすこともあります。治療に用いられる薬は、排尿筋を弛緩させる抗コリン薬β3受容体刺激薬などです。

 

過活動膀胱を抑えるためには、蓄尿期に膀胱平滑筋(排尿筋)が収縮しないようにすればよいのです。

 

つまり、膀胱平滑筋を弛緩させる薬が使用されます。
抗コリン薬(プロピベリン、オキシブチニン、ソリフェナシン、イミダフェナシン、トルテロジン)
過活動膀胱
ムスカリン性アセチルコリン受容体(M3)を遮断することによって、排尿筋の収縮を抑制することができます。また、追加の情報ですが、Ca拮抗作用による直接的な排尿筋の弛緩作用もあります(プロピベリン、オキシブチニン)

 

β3受容体刺激薬(ミラベクロン)
過活動膀胱
β3受容体を刺激することによって、排尿筋の弛緩を促進します。そうすることで、蓄尿する機能を高めることができます。

 

③その他の頻尿治療薬
・β2受容体刺激薬(クレンブテロール)
排尿筋のβ2受容体を刺激することによって、排尿筋が弛緩します。
また、外尿道括約筋のβ2受容体を刺激することによって、外尿道括約筋を収縮させます。
この2つの作用によって出口が閉まり、蓄尿機能が改善します。

 

・平滑筋弛緩薬(フラボキサート)
電位依存性Ca2+チャネルに作用しCa2+流入を抑制します。
また、ホスホジエステラーゼ阻害によってcAMPの濃度を上昇させます。cAMPが増加するとプロテインキナーゼAが活性化し、β1作用、β2作用などをもたらします。排尿筋のβ2受容体が刺激されると弛緩するため、蓄尿機能が改善します。

 

低活動膀胱

次に、低活動膀胱について見ていきます。

 

過活動膀胱とは違い、明確な診断基準はなく、詳しい病態生理も明らかとなっていません。何かしらの原因によって排尿筋の活動が低下し、排尿困難や残尿量が増加します。

 

低活動膀胱に使用される薬物は、過活動膀胱とは逆でコリン作動薬を使用します。

 

①コリンエステラーゼ阻害薬(ネオスチグミン、ジスチグミン)
アセチルコリン(ACh)を分解するコリンエステラーゼを阻害薬することによって、アセチルコリン(ACh)が蓄積していきます。その結果、AChが排尿筋と膀胱括約筋のM3受容体をそれぞれ刺激し、排尿を促進します。

 

②M3受容体作動薬(ベタネコール)
排尿筋と膀胱括約筋のM3受容体を直接刺激し、排尿を促進します。

 

参考)
薬剤を使用するにあたって、注意すべきことがあります。
副交感神経を介して、排尿筋収縮がある程度あることが前提となります。もし、排尿筋が収縮しなかったり、アセチルコリンによる刺激が伝わらなければ、薬剤を使用しても効果はありません。

 

また、コリン作動薬は、ムスカリン受容体だけでなくニコチン受容体も刺激します。ニコチン様作用は神経節を刺激し、ノルアドレナリンの放出を促進します。ノルアドレナリンは排尿障害のところで出てきましたね。α1受容体を刺激することで、前立腺内の平滑筋が収縮し、尿道の閉塞が起こります。そのため、下部尿路閉塞が起こっている場合などは、使用しない方がよいこともあります。

 

排尿障害治療薬及び頻尿治療薬のまとめ

排尿障害治療薬

薬物

特徴

【α1受容体遮断薬】
タムスロシン、シドロシン、ナフトピジル、プラゾシン、テラゾシン、ウラピジル

前立腺平滑筋のα1受容体遮断→尿道が広がる→排尿障害改善
タムスロシン、シドロシンはα1A受容体への選択性が高い。
ナフトピジルはα1D受容体への選択性が高い。

【M3受容体刺激薬】
ベタネコール

排尿筋と膀胱括約筋のM3受容体を直接刺激→排尿障害改善

【コリンエステラーゼ阻害薬】
ネオスチグミン、ジスチグミン

ChE阻害→ACh蓄積→排尿筋収縮、膀胱括約筋弛緩→排尿障害改善

頻尿治療薬

薬物

特徴

【抗コリン薬】
プロピベリン、オキシブチニン、ソリフェナシン、イミダフェナシン、トルテロジン

排尿筋のM3受容体遮断作用→排尿筋弛緩
Ca拮抗作用による直接的な排尿筋弛緩作用(プロピベリン、オキシブチニン)

【β2受容体刺激薬】
クレンブテロール

排尿筋のβ2受容体刺激作用→排尿筋弛緩
外尿道括約筋のβ2受容体刺激作用→外尿道括約筋収縮

【β3受容体刺激薬】
ミラベクロン

排尿筋のβ3受容体を刺激→排尿筋弛緩

【平滑筋弛緩薬】
フラボキサート

電位依存性Ca2+チャネルに作用しCa2+流入を抑制
ホスホジエステラーゼ阻害→cAMPの濃度を上昇

 

 

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