肝硬変の病態、診断、治療について

肝硬変の病態生理

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肝硬変の概念

肝臓の持続的な炎症によって、肝細胞壊死と再生が繰り返し起こった結果、肝臓の線維化が進行した状態です。

 

線維化した結果、肝機能が失われ肝臓内部の血流や胆汁の流れに支障をきたします。

 

 

肝硬変の原因

C型肝炎ウイルス感染が最も多く、次にB型肝炎ウイルス感染やアルコール性肝炎なども原因となります。

 

 

肝硬変の病態

症状として浮腫や腹水が起きてきます。

 

浮腫や腹水が起きるメカニズム

肝機能が落ちアルブミン合成能が落ちているため、血中アルブミンが減少します。この血中のアルブミンが減少することで、血漿膠質浸透圧の低下が起こるため、組織から水を引っ張る力が弱くなっているためです。

 

また、門脈圧の亢進や二次的なレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の亢進も起こってきます。

 

浮腫や腹水が溜まることによって、循環血液量が低下します。つまり腎臓への血液量も低下します。そうなることで、血液量が少なくなったと感知し、腎臓からレニンが分泌されてきます。そうしてレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の亢進へとつながっていきます。

 

肝硬変では肝臓の線維化により、門脈の血液が肝臓の中心静脈に流れていかず、門脈圧が亢進します。門脈圧が亢進すると、本来肝臓を通過して心臓へ戻るはずの血液が溜まっていくことになります。

 

①食道静脈瘤
肝臓に入ることができなかった血液は、食道静脈を通って心臓に戻ろうとします。食道静脈はもろくて細い血管です。そこに大量の血液が流れることで静脈瘤ができ、破裂すると食道内に大量の出血をきたし、吐血することがあります。

 

②脾腫 (脾機能亢進)
脾臓から出てきた血液は、脾静脈を通って門脈に合流します。肝硬変の場合、門脈に血液が貯留しているため、脾静脈の血液が門脈の方に流れていかず、脾臓に血液が溜まることになります。その結果、脾腫を生じます。血球を破壊する臓器である脾臓に血液が溜まることにより血球の破壊が亢進し、汎血球減少を生じます。

 

 

肝硬変の検査

肝細胞数の減少(線維化)することにより、タンパク合成能や解毒能が低下していきます。そのため、肝臓で合成されるアルブミンやコレステロール、血液凝固因子やコリンエステラーゼなどが減少します。また、アンモニアを無毒な尿素にするために大切な尿素サイクルが働かなくなるため、血中アンモニア濃度が上昇します。
 
AST、ALT
肝細胞が破壊されることによって血中へ出てくるため、高値を示します。

 

血中アンモニア
肝機能が低下するため、尿素サイクルが働かなくなり、血中アンモニアが増加します。

 

総ビリルビン
肝機能が低下するため、ビリルビンの代謝能が低下し、ビリルビン値が増加します。

 

プロトロンビン時間
肝臓の機能が低下するため、血液凝固因子の産生能も低下し、プロトロンビン時間が延長します。

 

血清コリンエステラーゼ
肝臓の機能が低下するため、タンパクの合成能も低下し、血清コリンエステラーゼが低下します。

 

 

肝硬変の治療

肝硬変は不可逆的な疾患であるため、対症療法が中心となります。
残っている肝細胞に対する庇護療法や合併症に対して治療を行います。また、浮腫・腹水の改善や、肝性脳症の改善も行います。適度な運動や食事療法も行われます。

 

肝硬変の一般療法

適度な運動が推奨されます。過度な安静ではなく、1日30分、1日2回くらいの運動が望ましいとされています。

 

また、食事療法として高タンパク食を摂ります。ただし、潜在性脳症や肝性脳症時には低タンパク食とします。また、浮腫や腹水の増悪を防止するため、食塩制限を行います。

 

肝性脳症治療

肝性脳症時には、血中のアンモニア濃度の上昇を抑制するために、タンパク質を制限します。

 

ラクツロース
腸内細菌によって乳酸となります。これによって腸管内のpHを低下させ、アンモニアを産生する菌の増殖を抑えたり、アンモニアの吸収を抑制します(pHが低い場合、アンモニアはイオン型となるため吸収は悪くなる)。

 

抗菌薬(カナマイシン、ポリミキシンB)
アンモニアを産生する菌の増殖を抑制することで、肝性脳症を改善します。
カナマイシンの副作用として、第Ⅷ脳神経障害(聴力障害)がありますが、カナマイシンはアミノグリコシド系の抗菌薬であり経口投与の場合ほとんど吸収されませんので問題はないと思われます。

 

分岐鎖アミノ酸製剤
分岐鎖アミノ酸とは、バリン・ロイシン・イソロイシンのことを言います。

 

肝硬変では、肝細胞の減少によって芳香族アミノ酸が増加しています。これは、肝臓での芳香族アミノ酸の代謝が低下しているためであり、この芳香族アミノ酸が脳に移行していくことで肝性脳症を発症します。

 

普段は分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸がバランスよく存在していますが、肝硬変では芳香族アミノ酸が増加しているため、このバランスが崩れます。そこで、分岐鎖アミノ酸を投与することでこのバランスを調節し、肝性脳症を防ぎます。

 

フィッシャー比 = 分岐鎖アミノ酸 / 芳香族アミノ酸
通常は、フィッシャー比が3~4ですが、肝性脳症時には、1以下に低下しています。

 

浮腫・腹水の改善
肝硬変患者では、先ほど説明した通り、二次性のアルドステロン症を引き起こすため、アルドステロン拮抗作用をもつスピロノラクトンが第一選択となります。

 

利尿薬(スピロノラクトン、フロセミド)
レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を抑制することで、肝硬変の浮腫や腹水の改善に用います。
フロセミドは、補助的に使用します。フロセミドの使用で低カリウム血症を起こし肝性脳症が悪化することがあるので、注意する必要があります。また、フロセミドの副作用として聴力障害がありますので、この点にも注意しましょう。

 

このページで確認しておくことのまとめ

  • 肝硬変の概念について
  • 肝硬変の病態についてしっかり理解する
  • それぞれの症状に対しての治療方法

 

以上、肝硬変の病態生理についての説明でした。

 

少しでも役立つ情報であったならうれしいです。

 

以下に、肝臓に関する疾患についての関連ページがありますので、気になる点は確認しておきましょう!

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