【薬学がわかる】食品の変質(腐敗と変敗)について

食品の変質(腐敗と変敗)とは?~腐敗と変敗の違いについて~

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食品の変質(腐敗と変敗)

このページでは、食品の変質について見ていきます。ページの最後に確認問題を準備してありますので、理解度チェックとして使ってください。

 

まず先に用語を確認しておきます。

 

腐敗とは、主にタンパク質(アミノ酸)微生物が増殖することによって起きる現象です。
変敗とは、糖質、脂質自動酸化によって起きる現象です。

 

この腐敗と変敗の違いについては混同しやすいので、ここで理解しておきましょう。
この先では、腐敗について詳しく見ていきたいと思います。

 

関連ページ

変敗についてはこちらのページで詳しく説明しています。
油脂が変敗する機構と変質試験について

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腐敗の原因とは?

微生物が食品に付着し、増えていくことが腐敗の原因となります。

 

腐敗を防止するための根本的な考え方としては、微生物を付着させないことが大切です。しかし、微生物は肉眼で見ることはできず、日常のあらゆる場所に存在しているため、付着することを完全に防止することは難しいと言えます。
そのため、腐敗を防止するためには、食品中の微生物を増やさない(低温保管するなど)、やっつける(加熱するなど)ことが、対策として有効であると考えられます。

 

ポイント
・微生物を防止するためには、微生物を付着させないことが大切
・しかし、完全に防止することは困難
・腐敗防止対策として、低温保管、加熱などが有効

 

腐敗に影響を与える要因とは?

腐敗に影響を与える要因として以下のものがあります。
①温度 : 25 - 40 ℃ 
②pH : 5.6 - 9.0
③水分量が多い食品(水分活性が高い)

 

温度は25℃から40℃あたりが適温であり、PHも中性付近が微生物にとって過ごしやすいんだなと考えておけばいいです。

 

ここで、水分活性というキーワードが出てきましたので、確認していきます。

 

水分活性(Aw:water activity)

水には、自由水結合水の2つがあります。以下のように理解しておけば大丈夫です。
自由水とは、水分子が自由に遊離している状態で、微生物が利用できる水です。
結合水とは、食品中のタンパク質などの栄養素と結合しているため、微生物は利用できない水です。

 

自由水と結合水

 

 

水分活性とは、食品中の水分に占める自由水の割合のことを言います。

 

(参考)
水分活性 = 食品中の蒸気圧 / 純水の蒸気圧 で求めることができます。

 

同じ水分量の食品であっても、食塩や砂糖を加えることで水分活性は下がり、微生物を増殖しにくくすることもできます。この方法も微生物を増やさない対策として有効です。

 

細菌類は、水分活性が0.9以上、酵母は0.88以上、カビは0.8以上で増殖可能とされています。

 

微生物の増殖抑制のために、どれくらいの水分活性にすればいいか問われますので、確認しておきましょう。

 

ポイント
・腐敗に影響を与える要因:温度、PH、水分活性
・結合水と自由水
・水分活性:細菌類、酵母、カビの増殖可能な数値

 

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腐敗により生成する物質

タンパク質は、タンパク質分解酵素によってアミノ酸に分解されます。さらにそのアミノ酸は、腐敗菌の酵素によって分解され、アンモニア、二酸化炭素、乳糖、酢酸、腐敗アミンなどを発生します。

 

〈アミノ酸の脱炭酸反応〉
脱炭酸反応

 

アミノ酸の脱炭酸反応によって生じたヒスタミン、チラミン、トリプタミン、アグマチン、カタべリン、トリプタミンなどのアミンを腐敗アミンといいます。この腐敗アミンは、アレルギー反応や血圧上昇作用などがあり、生体にとって有害な影響を与えることがあります。

 

また、魚類特有の成分であるトリメチルアミンオキシドは、腐敗菌より還元を受けてトリメチルアミンとなり、腐敗臭味を呈するようになります。

 

 

以下に腐敗アミンの生成反応についてまとめておきます。

 

①アミノ酸の脱炭酸反応(アミノ酸 → 腐敗アミン)

ヒスチジン → ヒスタミン (アレルギー様食中毒の原因物質)

 

チロシン → チラミン (血圧上昇作用)

 

トリプトファン → トリプタミン

 

アルギニン → アグマチン

 

リジン → カダベリン

 

トリプトファンについては、他にも様々な反応に繋がっており、問題にもしやすいので、特に注目して確認しておきましょう。

 

トリプトファン
上記の図のようにトリプトファンは、腐敗アミンの反応にも関わっているし、Trp-P-1を介しての発がん反応にも関わっています。

 

②魚類特有の成分 トリメチルアミンオキシドの還元

トリメチルアミンオキシド → トリメチルアミン (魚臭症と呼ばれる腐敗臭味の原因)

 

 

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腐敗の防止方法

①塩漬、糖漬

塩や砂糖を加えることで水分活性が下がり、微生物が利用できる自由水を減らすことができます。(浸透圧を利用することによって、自由水を除去することを利用している)

 

水分活性が、細菌類は0.9以上、酵母は0.88以上、カビは0.8以上で増殖可能であったことを思い出しておきましょう。この水分活性以下にすることで、微生物の増殖を抑制することができます。

 

②酢漬

pHを下げる(酸性にする)ことで、微生物が過ごしにくい環境をつくることができます。

 

③食品添加物の使用

殺菌料、保存料、防かび剤などを加えることで、腐敗を抑制できます。

 

④加熱処理

加熱することで、微生物を殺菌することができます。

 

⑤紫外線による殺菌

浸透性は低いため、表面の殺菌に使用されます。

 

※β線やγ線は、食品の殺菌目的では使用されません。
ただし、ジャガイモの発芽防止の目的で、⁶⁰Coのγ(ガンマ)線照射は許可されています。

 

以上が、食品の変質(腐敗)についての解説でした。変敗については以下のページで詳しく解説しています。

関連ページ

変敗についてはこちらのページで詳しく説明しています。
油脂が変敗する機構と変質試験

このページで学ぶべきことについて、以下の確認問題で理解度チェックしましょう。

確認問題(〇✕問題)

問1
カビ類の増殖には、通常0.9以上の水分活性が必要である

 

問2
一般にカビは、細菌よりも水分活性の低い環境で増殖できる

 

問3
食品中の微生物は、食品に含まれる結合水を利用して増殖する

 

問4
水分活性の低い食品は腐敗しやすい

 

問5
腐敗により生じるカダベリンは、アルギニンに由来する

 

問6
腐敗により、トリプトファンから発癌性物質のTrp-P-1が生じる

 

問7
システインの分解による硫黄臭の一因は、スカトールである

 

問8
トリメチルアミンは、魚肉の腐敗臭の原因の1つである

 

問9
食品中のヒスタミン含有量は、腐敗の指標として用いられる

 

問10
塩蔵は食品の腐敗防止に有効であるが、これは主に食品中の水分活性を低下させるためである

 

問11
我が国において、β線やγ線の照射は、食品を殺菌する目的で広く実用化されている

 

問12
ジャガイモの放射線照射は、腐敗防止が目的である

 

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確認問題の答え

問1:カビ類の増殖には、通常0.9以上の水分活性が必要である
:カビ類の増殖には、0.8以上の水分活性が必要です。
その他、細菌類は0.9以上、酵母は0.88以上であることも思い出しましょう。

 

問2:一般にカビは、細菌よりも水分活性の低い環境で増殖できる
:その通りです。解説は問1を参考にしてください。

 

問3:食品中の微生物は、食品に含まれる結合水を利用して増殖する
:食品に含まれる自由水を利用します。

 

問4:水分活性の低い食品は腐敗しやすい
:水分活性が低い方が腐敗しにくくなります。
合わせて、腐敗の防止方法も確認しておきましょう。

 

問5:腐敗により生じるカダベリンは、アルギニンに由来する
:カダベリンは、リジンに由来します。他の腐敗アミンと比べて、名前から連想しにくいので、しっかり確認しておきましょう。ちなみに、アルギニンに由来するのは、アグマチンです。

 

問6:腐敗により、トリプトファンから発癌性物質のTrp-P-1が生じる
:トリプトファンが腐敗により生じるのは、トリプタミンです。
トリプトファンの加熱によって生じるのが、Trp-P-1です。
トリプトファンは、様々な反応があるのでしっかり確認しておきましょう。

 

問7:システインの分解による硫黄臭の一因は、スカトールである
:システインの分解による硫黄臭の一因は、メルカプタンや硫化水素です。
トリプトファンの分解反応によってスカトールが生成します。

 

問8:トリメチルアミンは、魚肉の腐敗臭の原因の1つである
:その通りです。

 

問9:食品中のヒスタミン含有量は、腐敗の指標として用いられる
:その通りです。腐敗アミンについて確認しましょう。

 

問10:塩蔵は食品の腐敗防止に有効であるが、これは主に食品中の水分活性を低下させるためである
:その通りです。

 

問11:我が国において、β線やγ線の照射は、食品を殺菌する目的で広く実用化されている
:食品の殺菌目的ではなく、まな板などの表面殺菌などで使用されています。

 

問12:ジャガイモの放射線照射は、腐敗防止が目的である
:腐敗防止ではなく、発芽防止で使用されます。

 

このページで確認しておくことのまとめ

  • 腐敗と変敗の意味の違い
  • 水分活性(自由水と結合水の違いについて)
  • 腐敗アミンの反応(特にトリプトファンに関して)
  • 腐敗の防止方法
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