機能性胃腸症(FGID:Functional gastrointestinal disorders)の病態、診断、治療について

機能性胃腸症(FGID:Functional gastrointestinal disorders)の病態生理

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胸やみぞおち、おなかのあたりに不快な症状があるにもかかわらず、内視鏡検査などをおこなっても、症状の原因となる異常がみられないという病気を「機能性消化管障害(FGID)」と言います。

 

機能性消化管障害(FGID)には、以下のものがあります。
①機能性ディスペプシア(FD)
②非びらん性胃食道逆流症(NERD)
③過敏性腸症候群(IBS)

 

 

機能性ディスペプシア(FD:functional-dyspepsia)

概念

機能性ディスペプシア(FD)とは、胃の痛みや胃もたれなどの症状が続いているにもかかわらず、内視鏡検査などをおこなっても、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がみつからない病気です。

 

胃の痛みがあるものの、特に炎症が起きているわけではないため、生命にかかわる病気ではありません。しかし、日本人の4人に1人は機能性ディスペプシアであるという調査結果があるくらい身近な病気でもあります。

 

症状

明らかな原因がないにもかかわらず、
①食後に胃がもたれる
②すぐにお腹がいっぱいになる(あまり食べていないのに)
③みぞおちの痛み(心窩部痛)
④みぞおちの焼ける感じ(心窩部灼熱感)
などの症状があります。

 

診断

上記の①、②が主な症状の場合、食後愁訴症候群(PDS)といいます。
また、③、④が主な症状の場合、心窩部痛症候群(EPS)といいます。

 

①~④いずれかの症状が6ヶ月以上前からあり、最近3ヶ月は上記の基準を満たしていることが診断の条件となります。

 

 

治療

消化管運動機能改善薬

胃もたれやすぐに満腹感がある場合には、消化管のはたらきを活発にする消化管運動機能改善薬が選択されます。

 

①ChE(コリンエステラーゼ)阻害薬として、アコチアミドがあります。
FDにおける食後腹部膨満感、上腹部膨満感に適用です。

 

②ドパミンD2受容体拮抗薬として、イトプリドがあります。
 ドパミンD2受容体は、副交感神経終末に存在しており、Ach遊離を抑制します。そのため、拮抗薬を使った場合はAch遊離が促進し、胃運動促進します。

 

③セロトニン5-HT4受容体刺激薬として、モサプリドがあります。
Ach遊離促進による胃運動の亢進です。

 

酸分泌抑制薬(H2ブッロカー、PPI)

十二指腸に胃酸が流れ込むことによって、胃の運動機能が低下することがあり、機能性ディスペプシアの症状が起きます。また、胃が知覚過敏の状態である場合、正常な胃酸分泌であっても、みぞおちの焼けるような感じや、痛みを感じることもあります。

 

よって、酸分泌抑制薬を用いることで、胃酸の分泌を抑え、みぞおちの焼けるような感じや痛みを改善することができます。

 

抗うつ薬、抗不安薬

消化管運動機能改善薬や酸分泌抑制薬でも症状が良くならない場合は、抗うつ薬や抗不安薬が使われることがあります。

 

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌に感染している機能性ディスペプシアの患者さんが除菌療法を行うと、機能性ディスペプシアの症状が改善するという報告があります。

 

 

非びらん性胃食道逆流症(NERD:non-erosive reflux disease)

概念

胸やけの症状があるにもかかわらず、検査をしても食道にびらんや潰瘍などの異常がみつからない病気です。胃液や胃の中の食べ物などが食道に逆流して、びらんや潰瘍ができる逆流性食道炎と同じような症状が起きます。

 

症状

非びらん性胃食道逆流症(NERD)と機能性ディスペプシア(FD)で起こる症状は似ていますが、違いとして機能性ディスペプシア(FD)はみぞおちのあたりに症状が出るのに対して、非びらん性胃食道逆流症(NERD)はもっと上の方で胸のあたりに症状が出てきます。

 

過敏性腸症候群(IBS)

概念

慢性的に腹痛あるいは腹部不快感があり、便秘や下痢などの便通異常を伴い、排便によってその症状が改善するもの。腸管運動の機能的異常と内臓神経の知覚過敏のほかに、心理的な要因(ストレス)も影響するのが特徴です。

 

診断

検査には、特徴的な自覚症状からIBSを疑い、ほかの似た症状の病気でないことを検査で確認していきます。

 

診断は、詳細な身体症状および精神症状に関する問診が最も重要です。心理的ストレス時、不安状態、緊張時に増悪することが特徴です。日本では、注腸や大腸内視鏡検査などを行い、他の疾患である可能性を除外をしたうえで、IBSの診断をする考え方が多いです。

 

IBSのRome III診断基準
腹痛あるいは腹部不快感が最近3ヶ月のなかの1ヶ月につき少なくとも3日以上を占め、次のうち、2項目以上が当てはまる場合です。
①排便によって腹痛が改善する
②排便頻度の変化で腹痛が始まる
③便形状の変化で腹痛が始まる

 

治療

①ムスカリン受容体拮抗薬(メペンゾラート、ブチルスコポラミンなど)
ムスカリン受容体を介した大腸運動を抑制して、下痢を改善します。

 

②オピオイドμ受容体刺激薬(トリメブチン、ロペラミド)
オピオイドμ受容体を刺激することで、自律神経調節作用を示します。(主に下痢に有効です)

 

③セロトニン5-HT3受容体拮抗薬(ラモセトロン)
5-HT3受容体を介した消化管運動と痛覚伝達を遮断します。
男性の下痢型過敏性腸症候群に適用があります(女性では有効性が認められず、副作用発現のため禁忌です)。

 

④水分吸収薬(ポリカルボフィルCa)
胃内の酸性条件下でカルシウムを遊離してポリカルボフィルとなり、小腸や大腸などで高い吸収性を示し、水分保持作用や消化管内容物輸送調節作用によって下痢や便秘に効果を発揮します。

 

⑤緩下薬(酸化マグネシウム、ピコスルファートナトリウムなど)

 

⑥整腸剤(乳酸菌製剤)

 

⑦抗うつ薬、抗不安薬(スルピリド、フルボキサミン、パロキセチンなど)

 

 

このページで確認しておくことのまとめ

  • 機能性胃腸症(FGID:Functional gastrointestinal disorders)の概念
  • それどれの病態の違いをイメージできるようになる

 

以上、機能性胃腸症(FGID:Functional gastrointestinal disorders)についての説明でした。

 

少しでも役立つ情報であったならうれしいです。

 

以下に、消化器系疾患についての関連ページがありますので、気になる点は確認しておきましょう!

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