【薬学がわかる】特殊輸送(促進拡散・能動輸送・膜動輸送)の働きについて

特殊輸送(促進拡散・能動輸送・膜動輸送)

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特殊輸送は、促進拡散、能動輸送、膜動輸送の3つに分けられます。それぞれについて見ていきましょう。

 

促進拡散

水溶性物質の中には、輸送体と複合体を形成することで脂溶性を上げ、細胞の脂質膜に溶け込めるようになります。そして、膜中を濃度勾配に従った拡散により輸送されるものがあります。これが促進拡散です。

 

促進拡散の特徴

単純拡散と同じように薬物が濃度勾配に従って輸送されますが、異なる点として、促進拡散の場合は輸送担体を用います。担体を用いていますが、濃度勾配に従うためエネルギーは必要としません

 

これらの物質の拡散速度は、単純拡散と同じくFickの第一法則に従います。

 

しかし、担体を用いた輸送系であるため、物質濃度が高くなると担体が足りなくなってきてしまい、透過速度に飽和現象が認められます。

 

そのため、物質の膜透過速度はMichaelis-Menten式で表されます。

 

参考)
D-グルコースの生体膜透過は、担体介在輸送によって起こりますが、促進拡散と能動輸送の2種類の機構が存在します。
グルコースの吸収
消化管側では、Na⁺/グルコース共輸送系(SGLT1)によって細胞内に能動輸送されます。細胞内に入ったグルコースは、血管側にあるグルコース輸送タンパク質によって促進拡散され、血液中へと吸収されます。

膜輸送機構

トランスポーター

駆動力

能動輸送

Na+/グルコース共輸送体(SGLT1

Na+勾配

促進拡散

GULT2

濃度勾配

 

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能動輸送

エネルギーを使って、膜内に存在する輸送担体により、薬物が濃度勾配とは逆方向に輸送される現象です。

 

能動輸送により吸収される薬物の吸収速度は、濃度の上昇に伴い飽和が認められるので、その速度はMichaelis-Mentenの式で表されます。

 

 V = Vmax ・ C / (Km + C)

 

Vmax  : 最大輸送速度
C     : 吸収部位の薬物初濃度
Km        : Michaelis定数 (Vmaxの半分の速度を与える薬物濃度で、薬物と担体との親和性の指標となり、値が小さいほど親和性が大きいことを示す
ミカエリスメンテン式
薬物濃度がMichaelis定数に比べて著しく小さい場合、輸送速度は薬物濃度にほぼ比例します。また、薬物濃度が高くなると、輸送速度は飽和しVmaxで一定の値となります。

 

能動輸送の特徴

濃度勾配に逆らって薬物が輸送される。
エネルギー(ATP)を必要とする。
担体(トランスポーター)を利用する
④担体(トランスポーター)の数には限りがあるので、薬物の濃度増加に伴って吸収速度に飽和現象がみられる。
化学構造が似た物質があると担体の結合部位で競合するため、透過が阻害される。

 

 

トランスポーターを介する薬物吸収

約300~400種のトランスポーターの発現が考えられていますが、その中の数十種のトランスポーターが薬物の輸送に関わっていることが確認されています。

 

能動輸送は、ATPを直接利用するかどうかを基準として、1次性能動輸送2次性能動輸送に分けられています。

 

1次性能動輸送

ATPなどのエネルギーを直接利用して、トランスポーターにより物質を輸送する能動輸送です。
 
例)Na⁺,K⁺ ‐ATPase
Na⁺,K⁺ ポンプ(ナトリウムカリウムポンプ)とも呼ばれており、小腸上皮細胞において基底膜側(血管側)に存在するイオン輸送型ポンプであり、ATPを直接消費するので1次性能動輸送担体に分類されています。

 

2次性能動輸送

1次性能動輸送により生じた膜電位やイオン(Na+、K+)勾配を駆動力として利用することにより、物質を輸送する能動輸送です(ATPの加水分解エネルギーを間接的に使用します)。

 

また、駆動力となるイオンの輸送と同じ方向に物質が輸送される場合を共輸、反対方向に輸送される場合を逆輸送といい、輸送方向によっても分類されています。

 

①Na⁺ / アミノ酸共輸送系
Na⁺の濃度差によって、管腔側(消化管側)から細胞内へ Na⁺ を取り込みます。このNa⁺の流入にのって、アミノ酸も一緒に取り込みます。この輸送系の例としてL-ドパなどがあります。

 

参考)吸収過程の相互作用の例
レボドパと高タンパク食を併用すると、アミノ酸輸送系の競合阻害が生じるため、吸収が低下します。

 

②Na⁺ / H⁺ 逆輸送系
Na⁺ の濃度差によって、管腔側(消化管側)から細胞内へNa⁺を取り込みます。この時、細胞内のH⁺が交換されます。

 

参考)
この輸送によって生じたH⁺の濃度勾配は、ジ(トリ)ペプチドなどの輸送における駆動力となります。

 

③H⁺ / ペプチド共輸送系
ペプチドトランスポーターは、管腔側(消化管側)から細胞内へジペプチドやトリペプチドをH+と一緒に共輸送します。

 

例として、アミノ-β-ラクタム抗生物質(セファレキシン、シクラシリン、セフラジン)、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)は、その構造中にペプチド結合をもっており、このトランスポーターに認識されることがわかっています。

 

参考)薬物排出輸送タンパク質(P糖タンパク質)

一度吸収した薬物を再び細胞外に排出する輸送タンパク質があり、P糖タンパク質はその代表例です。

 

これは、ATPをエネルギー源としてさまざまな物質を輸送する1次性能動輸送として働きます。

 

発見された当初は、腫瘍細胞の抗がん剤に対する多剤耐性を起こす原因として考えられていました。このP糖タンパク質により、多くの抗がん剤が細胞内から汲み出されていると考えられていたからです。

 

その後、腫瘍細胞だけではなく、正常な細胞膜にも発現していることがわかり、現在では生体内に入った異物や老廃物を体外から排出することにより、恒常性の維持に寄与していると考えられています。

 

P糖タンパク質の基質特異性は、他のトランスポーターと比べて圧倒的に低いです。また、基質として認識される薬物間には構造的な共通性は認められません。

 

しかし、P糖タンパク質に輸送される薬物の多くは、脂溶性が高く、その多くはシトクロムP450(CYP3A)の基質としていることがわかっています。

 

P糖タンパク質の基質となる代表的な例

抗癌薬

ビンクリスチン

ビンブラスチン

Ca拮抗薬

ベラパミル

免疫抑制薬

シクロスポリン

タクロリムス

β-遮断薬

メトプロロール

アセブトロール

ステロイドホルモン

デキサメタゾン

ヒドロコルチゾン

その他

ジゴキシン

キニジン

 

P糖タンパク質の発現場所とその機能

発現場所

機能

能毛細血管

毛細血管内皮細胞に存在しており、血液脳関門に関わっている。

→薬物を脳から血液へ排出します。

肝・腎

〈肝〉肝細胞の胆管側膜に存在しており、胆汁排泄に関わっている。

→薬物の胆汁排泄を促進します。

 

〈腎〉近位尿細管の刷子縁膜に存在しており、尿中排泄に関わっている。

→薬物の尿中排泄を促進します。

腸管

小腸の上皮細胞の刷子縁膜に存在しており、小腸における吸収や分泌に関わっている。

→薬物の吸収を阻害します。

副腎・胎盤

血液胎盤関門に関わっている。

 

P糖タンパク質と同じような働きをもつトランスポーターとしてMRP(Multidrug resistance associated protein)が知られています。このMRPも多くの場所に発現しています。

 

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膜動輸送

細胞膜の一部がへこむような感じで、タンパク質や多糖のような分子量が大きな高分子を細胞膜に包み込み、細胞内に取り込む現象です。この輸送ではATP(エネルギー)が必要です。

 

方向性による分類

エキソサイトーシス

細胞の内側から外側へ物質を輸送する

エンドサイトーシス

細胞の外側から内側へ物質を輸送する

 

輸送物質の種類による分類

飲細胞作用(ピノサイトーシス)

溶液状(可溶性)のものが取り込まれる場合

食細胞作用(ファゴサイトーシス)

微粒子状(不溶性)のものが取り込まれる場合

 

薬物の生体膜透過機構のまとめ

輸送機構

濃度勾配

輸送担体

生態エネルギー

膜の変形

単純拡散

従う

無し

不要

無し

促進拡散

従う

有り

不要

無し

能動輸送

従わない

有り

必要

無し

膜動輸送

従わない

無し

必要

有り

 

 

このページで確認しておくことのまとめ

  • Michaelis-Menten(ミカエリスメンテン)の式
  • 一次性能動輸送と二次性能動輸送
  • P糖タンパク質の発現場所と役割、基質となる薬物
  • 薬物の生体膜透過機構のまとめの表は覚えるように!

関連ページ

単純拡散についてはこちらのページで詳しく説明しています。
単純拡散(受動輸送)について

 

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