【薬学がわかる】代表的な有害化学物質の急性・慢性毒性の特徴(有害金属)

代表的な有害化学物質の急性・慢性毒性の特徴(有害金属)

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有害金属

 これからは、多くの金属(水銀や鉛など)の毒性について見ていきます。
その前に、どういったことが、問題として問われてくるのかについて見ておきましょう。

 

多くの金属では、有機態と無機態とを比べた場合、有機態の方が毒性は高いです(毒性:有機水銀 > 無機水銀)。
なぜなら、有機態の方が脂溶性が高いため、体内に吸収されやすいからです。そして、吸収された有機体は、脳に到達して中枢神経障害を起こします。

 

有機態は脳に移行し中枢神経障害を起こすとわかりきっているので、あまり問題としては問われません。
一方、無機態の方が特徴的であるため、問題としては問われることが多くなります。

 

無機態の例として、カドミウムがあります。カドミウムは無機態で脂溶性が小さいため、水に溶けやすく、コメや井戸水などを汚染します。人体への毒性としては腎障害があります。

 

 

ここまで、有機態の方が毒性が高いとお話をしてきましたが、例外があります。それがヒ素です。

 

ヒ素には有機ヒ素と、無機ヒ素があるのですが、有機の方が毒性低く、無機の方が毒性は高くなります。

 

さらに、無機のヒ素には価数の違いがあり、5価のヒ素と3価のヒ素があるのですが、3価の方が毒性が高くなります。3価のヒ素は、ヒ素ミルク中毒事件や、和歌山カレー毒物事件などに混入していたことで有名です。

 

また、一般的な金属ではメチル化すると、毒性は高くなる(脂溶性が上がるため)のですが、ヒ素では、逆に毒性が下がります。

 

参考)有機態と無機態
有機態とはエチル基、メチル基などのC(炭素)を含むものです。反対に無機態はC(炭素)を含まないものです。

 

 

ここで、整理を兼ねていくつか問題を出してみますので考えてみてください。
①鉛は体内で効率よくメチル化される。○か×か?
答えは×ですね。メチル化されて有機態になると毒性が上がってしまうことになるからです。体はそんな自身に不利になるようには働かないということがわかれば解けると思います。

 

②水銀は体内でメチル化されて排出される。○か×か?
答えは×ですね。当たり前ですよね。メチル化されると脂溶性が上がって、蓄積されやすくなります。排泄とは逆のことを行っています。

 

③ヒ素はメチル化されて毒性が下がる。○か×か。
答えは○ですね。これだけは注意しておく必要があります。例外パターンだからです。先ほど、学んだ通りヒ素はメチル化されて毒性が下がりますよね。注意しておきましょう。

 

 

水銀

水銀は無機水銀(Hg+、Hg2+)、金属水銀(Hg0)、有機水銀(メチル水銀)と3種類あります。

 

金属水銀
これは体温計に使われていました(ガラスで出来ている体温計です)。あれを振り回していたら、脳みそが溶けるぞと怒られたものです。実際、体温計が割れて水銀を吸い込んでしまうと、金属水銀は脂溶性が高いために脳へと取り込まれていき、脳に障害を与えます。

 

有機水銀
環境中の有機水銀の大部分はメチル水銀です。
環境中では、微生物の作用によって有機水銀から無機水銀へと変換しています。また、無機水銀から有機水銀への変換も同時に行っています。こういった微生物の作用を生物学的変換といいます。

 

メチル水銀は、水俣病の原因物質であり、環境中への排出は非常に厳しく規制されています。環境中では、食物連鎖を通じて魚介類に蓄積されていきます。

 

生体においては、髪の毛や体毛中に蓄積しやすいです。また、水銀はシステインと結合しやすいということも頭の片隅に置きましょう。

 

 

参考)一般的に微生物は、有機物を無機物に変える働きをします。しかし、金属の場合はそれに加えて無機物を有機物に変える働きもしているのです。

 

 

解毒薬
ジメルカプロール

ヒ素や水銀の解毒薬に用いられます。
これの構造ですが-SH基を2つもっていることに注目してください。
この-SH基に金属がくっつきやすい(キレート形成しやすい)ため、そのまま金属とくっついて排出されていくので、解毒の作用があるわけです。
ジメルカプロール

 

 

カドミウム

毒性として、腎臓の近位尿細管への特異的な障害があります。腎臓が障害されることによって、カルシウムの再吸収ができなくなり、カルシウムが欠乏します。その結果、骨軟化症といった骨障害が現れます。

 

この骨軟化症は、くしゃみをしただけで骨が折れたり、肩をたたかれただけで骨が折れたりと、骨が非常にもろくなります。歩くだけでも骨が折れたりし、イタイイタイと常に言っていることから、イタイイタイ病とも呼ばれます。

 

また、腎臓が障害されていることから、タンパク質なども再吸収されずに出ていきます。
そこで、カドミウムの暴露指標になっているのがβ2-ミクログロブリンという低タンパク質です。

 

 

これまで、毒性について説明しましたが、最後に体内の解毒作用について紹介しておきます。
カドミウムなどの金属が体内に取り込まれると、重金属結合タンパク質であるメタロチオネインの合成が誘導されます。

 

このメタロチオネインは、金属と結合することでその毒性を下げる働きがあり、金属の障害に対する防御因子と考えられています。そのため、大部分の金属がメタロチオネインと結合し、組織中に蓄積することで毒性は軽減します(蓄積すると毒性がありそうな気がしますが、メタロチオネインと結合している場合は毒性はありません)。

 

 

鉛には有機鉛と無機鉛があります。
もちろん有機鉛の方が毒性は強いのですが、脳にいって毒性が出るといった当たり前のことが起こるので、問題としてあまり問われることはありません。

 

そのため、ここでは無機鉛について詳しく見ていきましょう。
無機鉛の毒性としてよく見られるものは、貧血や疝痛(せんつう)があります。疝痛とは、簡単に言うとお腹が痛くなるという症状のことです。

 

貧血が起こる作用機序としては、ヘム合成系の阻害(δ-アミノレブリン酸脱水酵素の阻害)です。
また、血中のδ-アミノレブリン酸の増加や、尿中のコプロポルフィリンの排泄が増加します。

 

参考)
この金属を摂取しやすい職業として、自動車のバッテリー工場があります。
例えば、自動車のバッテリー工場に従事している35歳男性が貧血の症状を訴えて病院に運ばれた。この原因として考えられる金属成分は何か?などの問題が作れると思います。

 

 

クロム

毒性としては、六価クロムの鼻中隔穿孔があります。
六価クロムと三価クロムでは、毒性は六価 > 三価 で、六価クロムの方が毒性は高いです。

 

 

スズ

無機スズと有機スズがありますが、有機スズが特徴的なので、有機スズについて見ていきます。

 

多くの有機態金属は脳に行くと説明しましたが、有機スズは少し特殊です。
毒性としてアンドロゲン様作用(オス化する作用)があります。
昔は防カビ、防虫剤として、船底塗料として用いられていました。しかし、オス化する作用があるため、使用が制限されました。

 

化審法によってビス(トリブチルスズ)オキシド(TBTO)が第一種特定化学物質に指定されています。他の有機スズは2種特定化学物質に指定されています。

 

このページで確認しておくことのまとめ

  • 有害金属のそれぞれの毒性について
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