【薬学がわかる】油脂が変敗する機構と変質試験について

油脂が変敗する機構と変質試験について

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このページでは、油脂の自動酸化と変質試験について見ていきます。ページの最後に確認問題を準備してありますので、理解度チェックとして使ってください。

 

関連ページ

腐敗についてはこちらのページで詳しく説明しています。
食品の変質(腐敗と変敗)について

 

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油脂の自動酸化

 

油脂成分を含む食品が酸素に触れることで酸化され、変敗が進んでいきます。食品が酸化されることで、味や色も悪くなります。また、食中毒の原因にもなるので注意が必要です。

 

油脂の変敗が起こる反応は、食品中に含まれている不飽和脂肪酸の自動酸化によって起こります。この不飽和脂肪酸の二重結合が多いほど変敗しやすくなります。

 

以下に、不飽和脂肪酸の自動酸化の機構を図示してあります。

反応機構の流れ

リノール酸
①水素の引き抜き
リノール酸などには、二重結合に挟まれた活性メチレン基(11位)があります。この位置にある水素は引き抜かれやすいという特徴があります。熱や光によって水素が引き抜かれて炭素ラジカルを生成することから、最初の酸化反応が始まっていきます。

 

②ぺルオキシラジカルの生成(開始反応)
ラジカルと二重結合の移動が起こり、酸素と反応してぺルオキシラジカル(ROO・)を生成します。

 

③連鎖反応
ぺルオキシラジカルが生成すると、次々に残っている不飽和脂肪酸の活性メチレン基から水素を引き抜きます(①の反応)。そして、ぺルオキシラジカルはその水素と反応してヒドロペルオキシドとなります。

 

④もう一度ラジカルに
生成したヒドロペルオキシドは、FeやCuなどの金属イオンによって分解され、再びペルオキシラジカルを生じます。

 

⑤二次生成物
ぺルオキシラジカルは再び③の連鎖反応に関与したり、重合して粘度の高いポリマーになったり、分解してアルデヒド類、ケトン類、アルコール類、低級の脂肪酸などを生じます。

 

※低級脂肪酸を生成するため油脂は酸性になります。また、アルデヒドや炭化水素などの生成によって、不味、悪臭を生じようになります。

 

このように反応していくことで、油脂の変敗が進んでいきます。

 

油脂の自動酸化まとめ

自動酸化

 

この分野でよく問われることは、以下に記載した油脂の変質試験に関することが多いです。

 

ポイントとして覚えておくことは、

  • 油脂が変敗する過程で、それぞれの試験値がどのように変化するのか
  • それぞれの試験は、どのように測定しているのか

この2点に注目して、以下に記載した油脂の変質試験について見ていきましょう。

 

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油脂の変質試験

ヨウ素価とは?~ヨウ素価を求める計算方法

この値は、油脂中の不飽和脂肪酸の量を示します。
ヨウ素価とは、油脂100 gに付加することのできるヨウ素(I₂)のグラム数です。この値が大きいほど試料中の脂肪酸の不飽和度が高い(二重結合の数が多い)ことを示します。

 

つまり、この値は不飽和脂肪酸の二重結合の数で変化します。つまり、最初は不飽和脂肪酸の二重結合がたくさんあるため値は大きくなりますが、油脂の変敗が進んでいくにつれて(時間が経過することで)、二重結合の数も減ってくるため、値は小さくなっていきます。

 

測定方法
試料100gに吸収されるヨウ素(I₂)の g 数で示します。

 

計算方法
リノール酸C₃H₅(OCOC₁₇H₃₁)₃ のみを含む油脂を例に、ヨウ素価を考えていましょう。
※リノール酸の分子量は878 二重結合は6つ

 

油脂100 g当たりで考えるので、この時のリノール酸の物質量(mol)は、100/878 molです。
リノール酸の二重結合は6つあるため、付加できるヨウ素の物質量(mol)は、100/878×6 molです。
ヨウ素の分子量は、127×2=254であるため、付加できるヨウ素のg数は、254×100/878×6≒174
ヨウ素価は、174と計算することができます。

 

過酸化物価とは?

過酸化物価は、油脂の酸化変質の過程で生成する過酸化物の量を示す指標です。
油脂の自動酸化の過程で、はじめの段階では徐々に増加していきますが、途中からその値は減少していきます。(下のグラフ図を参照)
つまり、はじめのうちは油脂の変敗が進むにつれて、過酸化物(ヒドロペルオキシドなど)は増加するため、過酸化物価の値も大きくなります。しかし、さらに変敗が進むにつれて、過酸化物(ヒドロペルオキシドなど)はカルボニル化合物やアルデヒド類に分解されるため、途中から値は小さくなっていきます。

 

測定方法
油脂1kgにより酸化されるKI中のヨウ素のミリ当量数で示します。
  過酸化物価=(a-b)f / W ×10
  W:油脂のg数
  a : 本試験0.01mol/L Na₂S₂O₃の滴定数(mL)
  b : 空試験0.01mol/L Na₂S₂O₃の滴定数(mL)
  f : 0.01mol/L Na₂S₂O₃溶液のファクター
  10:0.01×1000(1000はgをkgに換算するため、0.01はNa₂S₂O₃の規定度数からきています。)

カルボニル価とは?

ケトンやアルデヒド類などのカルボニル化合物の量を示します。油脂の変敗が進むことで、徐々に値が大きくなります。

 

測定方法
ケトンやアルデヒドを 2 , 4 - ジニトロフェニルヒドラジンと反応させたとき、油脂1g当たりの 440 nm の吸光度で示します。

 

チオバルビツール酸試験値(TBA値)とは?

マロンジアルデヒドなどのアルデヒド類の量を示します。油脂の変敗が進むことで、徐々に値が大きくなります。

 

測定方法
試料1g に酸性条件下、チオバルビツール酸と加熱し反応させて呈色した赤色色素の532 nm における吸光度で示します。

 

酸価とは?

遊離脂肪酸の量を示します。油脂の変敗が進むことで、徐々に値が大きくなります。
酸価が大きい=加熱などによって油が悪くなることを意味します。

 

測定方法
油脂1 g 中に含まれている遊離脂肪酸を中和するのに必要な水酸化カリウムの mg 数で示します。

 

 

参考)過酸化物価と酸価の違い
食品に含まれる油脂が、空気中の酸素により酸化し、生成した過酸化脂質の量を測定するのが過酸化物価です。過酸化物価は、油脂の酸化の度合いを直接示します。一方、酸価は、油脂中の遊離脂肪酸の量を表します。遊離脂肪酸は、油脂が劣化するなどして、油脂の加水分解が起きて生じます(油脂が遊離脂肪酸の形に変わります)。

 

油脂が変質する過程での試験値の変化(グラフ図)

変質の指標

 

油脂の変敗防止方法について

油脂の変敗を防止するためには、どの段階を抑えることが最も有効でしょうか?はじめの図にもあった通り、油脂の変敗は活性メチレン基の水素が引っこ抜かれて、ラジカル化する所からはじまります。つまり、一番初めの段階であるラジカルの発生を防ぐことが最も有効であると考えられます。

 

最初のラジカル生成は、酸素存在下、光や熱が加わることで起こるので、それらを防ぐことが大切です。つまり、冷蔵、遮光、真空包装などをすればよいでしょう。また、一度発生したラジカルには、酸化防止剤(ラジカル捕捉剤、金属封鎖剤など)を用いることが有効と考えられます。

 

以上が、油脂が変敗する機構と変質試験についての解説でした。食品の変質(腐敗)については以下のページで詳しく解説しています。

関連ページ

腐敗についてはこちらのページで詳しく説明しています。
食品の変質(腐敗と変敗)について

 

 

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このページで学ぶべきことについて、以下の確認問題で理解度チェックしましょう。

 

確認問題

問1
油脂の変敗では、主に飽和脂肪酸が自動酸化する

 

問2
酸価は、遊離脂肪酸を示す値であり、変質により増加する

 

問3
過酸化物価は、ヒドロペルオキシドなどの酸化物量を示す値で、変敗により増加し、その後、減少する

 

問4
カルボニル価は、不飽和脂肪酸に含まれるカルボニル基の量を示す値で、変質により減少する。

 

問5
ヨウ素価は、油脂中の不飽和脂肪酸の含有量であり、変質により増加する

 

問6
油脂の変敗を防止するために、遮光することは有効である。

 

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確認問題の答え

問1:油脂の変敗では、主に飽和脂肪酸が自動酸化する
:油脂の変敗では、不飽和脂肪酸が自動酸化します。二重結合が多いほど、変敗しやすかったことを思い出しましょう。

 

問2:酸価は、遊離脂肪酸を示す値であり、変質により増加する
:その通りです。また、TBA試験値、カルボニル価も変質により増加します。

 

問3:過酸化物価は、ヒドロペルオキシドなどの酸化物量を示す値で、変敗により増加し、その後、減少する
:その通りです。

 

問4:カルボニル価は、不飽和脂肪酸に含まれるカルボニル基の量を示す値で、変質により減少する。
:問2を確認してください

 

問5:ヨウ素価は、油脂中の不飽和脂肪酸の含有量であり、変質により増加する
:変質によって減少します。ヨウ素価は油脂中の不飽和脂肪酸の含有量を示していることを思い出しましょう。

 

問6:油脂の変敗を防止するために、遮光することは有効である。
:その通りです。冷蔵、遮光、真空包装などをすることで、ラジカルの発生を抑えることができたことを思い出しましょう。

 

このページで確認しておくことのまとめ

  • 不飽和脂肪酸の自動酸化の流れ
  • 変質試験の試験値がどのように変化するのか
  • それぞれの試験は、どのように測定しているのか
  • 油脂の変敗防止方法
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